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肝実とアレルギー性皮膚炎 2015.11.05
肝実とアレルギー性皮膚炎
アレルギー性皮膚炎についての治療は、ある程度目安がついているが、実態は任してくれと、胸を張るほどの成果は上げていなかった。四苦八苦しながらどうにか少し良くなる程度であった。
アレルギー性皮膚炎の場合、実の反応が強く、経絡の虚実を見極めて、実の反応を取り除くやり方で、皮膚炎の治療をしていた。実の反応と取り除くと、皮膚炎は良くなるのだが、4,5日するとまた同じ状態で出てくる。どうしたものか?ずーっと悩んでいた。
ある日、アレルギー性皮膚炎の患者さんを診察しているときに、期門Lに実と虚の反応が出ていた。おかしいなあ!! ここはいつも虚の反応のはずなのに、今日は、実と虚の反応が出ている。そのときピンとひらめいた。今まで悩んでいたヒントになるのではないかという予感だ。
早速、期門Lに接触鍼をしてから知熱灸をした。その後、アレルギー反応を起こしている経絡に治療を加えた。ところがどうだ、今まで何度やってもぶり返していたアレルギー疾患がスーッと消えて、5日間ぐらいの内に完治してしまった。
これはすごい、期門Lに何があるのだろうか?期門穴は肝臓のすぐ上にある。肝臓疾患の特効穴である。肝臓の虚、実、反応を取り除くと、アレルギーが速やかに収まってゆく。肝臓は毒素を解毒する作用を担当している。その肝臓に実と虚の反応があると、肝臓はイライラしくる。
肝臓は、毒素を解毒して便として放出する仕事を辞めて、毒素を解毒しないまま、皮膚表面に排出して、解毒するという近道を選んだのではないかと推察した。
いつまでも皮膚表面に毒素を排出するため、治しても、治しても、ぶり返す皮膚炎に困り抜いていた。まだ、ほんの2,3、例だけの臨床例だが、これが本物ならアレルギーに対して、大変な展望が開ける。
なぜ、期門Lに実、と虚が入り込むと、このようなことになるのか? 肝臓がイライラしてくると、実の病は、より実が酷くなり、病状が悪化する。また、虚の病は、より虚が酷くなり、患部は弱ってくる。このように実も虚も、悪いほうに誘導して、病を増長させる作用があるのではないか。
このような仮説を立て、臨床の中で、あらゆるアレルギーと思われる疾患に対して、期門Lに反応が表れている患者に対しては、その病状と期門Lとの関係を注意深く観察しながら、経過を見ていた。
まだ、期門Lに対しては、日が浅いのではっきりとしたことは言えないが、今までの観察では、高血圧、腎臓病、アレルギー性皮膚炎、脱毛症、湿疹、外反母趾、などで治りが早くなっている。
ここで肝実に対して整理してみる。
太衝、中封、の肝実は、イライラ、夜泣き、疳の虫、緑内障、怒りっぽい、頭痛、めまい、股関節痛、などがあり、ほとんどが顔面と頭に関係している。
背の5-1Kの肝実は、胃痛、腰痛、肩こり、胃酸過多、ぎっくり腰、つわり、膝の痛み、などがあり、背中、腰部、腹部、などに関係している。
期門Lの肝実は、高血圧、腎臓病、アレルギー性皮膚炎、脱毛症、湿疹、外反母趾、などに関係している。期門Lは部分的な疾患というより、全身的な疾患に関係してくる傾向があるように思える。
病気を悪いほうへ、悪いほうへと誘導する、期門Lの実と虚の性質を考えると、案外、がん疾患や糖尿病にも関係してくるかもしれない。もし、がん疾患や糖尿病に期門Lが関係しているとしたら、新たな展望が開けてくる可能性もある。