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間違えてはいけない治療 2015.04.25
間違えてはいけない治療
ある日、体格の良い元気そうな、40代の男性が来院した。赤い顔をして、とても苦しそうにしている。
症状を聞くと、右の肩甲骨内縁あたりが、2~3日前から痛い。1か月前くらいから、少しウズウズとして、気になっていた。
それが昨夜は我慢できないぐらいの痛さになった。右腕を上げるのも痛い。首を後屈させるのも痛い。咳をしても痛い。夜中に目が覚めるぐらいの痛さがある。
昨夜は痛くて、一晩中寝られなかった。横向きになっても、座っても、どのような体制になっても痛くて我慢が出来ない。
服を脱いでもらい、患部を見ると、肩甲骨の上が赤く膨れ上がって、少し硬さがある。直径10センチくらいの大きさである。
症状、赤い腫れ、硬さ、痛み、急激な進行、どれをとっても実の症状である。しかし、ここで実と決めてかかっては、取り返しのつかない失敗をすることもある。
当院には、提鍼という虚、実、を判定する道具がある。この提鍼を使って虚、実、を確実に判定して治療すると間違いが格段に少なくなる。
患部に提鍼を当て、脈を診ると虚の反応である。間違いではないかと、入念に何回も診たが、間違いなく虚の反応であった。症状としては実の症状ばかりである、にもかかわらず虚の反応なのだ。
このような急激に進行している病状の場合は、確実に病状を緩和させなければならない。間違ってより、病状を進行させるようなことがあったら、救急車頼みとなる。
最も神経を使う切迫した治療だ。その上、部位から判断すると、心臓に関係した症状である。一歩間違うと大変なことになる。
原因は食べ過ぎ、飲み過ぎ、過労、肥り過ぎ、などのストレスが心臓の負担となり、背中の痛みとなって現れたものと思われる。
診察
本治法 脾肝相克 経金穴を使う 左から霊道、商丘、 右から中封、復溜2、
虚の反応 ①心経 ②肝経陰 ③膀胱経1
実の反応 ①胃経 ②膀胱経2 ③肝経陽
本治法でも心経が一番虚であった。
① 右背中の痛み。
右足の胆経は子午関係で心経と関連しています。右足胆経の3-3Kに虚の反応があった。そこからウエーブで左背の3-3Kに飛びここが治療点となる。右背中、患部の反対側になる。
患部は直径10センチ位の広さがあるので、治療点も提鍼で確認しながら、10センチほどの範囲を選定した。そこに虚の反応がなくなるまで、知熱灸をすえた。この治療によって、腫れと痛みは、半分以下に軽減した。
② その他の治療は本治法と、2番目の虚である肝経陰の治療点、期門穴Lに知熱灸をすえただけである。
考察
かなり酷い症状にもかかわらず、1回の治療で症状が、半分以下に軽減したことは、虚、実、の判定に間違いがなかったことに、大きな功績があった。その後、2回の治療で完治した。