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うれしい便り 2011.02.18
うれしい便り
鍼灸師にとって患者さんからの喜びの報告を受ける事はなにより嬉しいことである。
電話の鳴る音に受話器をとってみると、電話の向こうから逆子でお世話になった00です。御蔭さまで無事、女の子が生まれました。
2950グラムの元気な女の子です。へー、そうよかったね。母子ともに元気でいるの? はい、連絡が遅くなったんですけど無事に自然分娩で出産できたことを報告します。ありがとうございました。
わざわざ連絡してくれてありがとう。こちらもうれしいよ、お元気でね。と言って電話を切った。
2か月前に逆子で来院した患者さんで、もう9カ月に入っていた。9か月になると赤ちゃんも大きいし、逆子を治すのは成功率が半分くらいになる。大丈夫かな、と思ったが正直に成功率は半分だよ、それでよかったら来て下さい。
お腹を切るのはやりたくないので何とか鍼灸で治療してみてください。それでもだめなら諦めます。と云うわけで治療を引きうけた。
日時が限られているので、週2回の治療と自宅での施灸を併用して行うことにした。治療していると今までに感じたことがないくらい、お腹の中で胎児が動いているのが分かった。
この調子だと、すぐにでも正常に戻るのではないかという、期待があった。しかし、なかなか戻らない。
出産日はだんだん近くなるし、お医者さんも困ったね。来週までに逆子が治らなければ手術も考えましょうと云った。
とうとう手術の日が来てしまった。ごめんね、成功できなくてと言った。先生よいのですよ。初めから半分の成功率と思っていたから仕方がありません。と言ってくれた。
ところが次の日、電話が掛って来た。分娩台に上がる前に、産婆さんが試しにお腹の上から回してみようかと云うので、お願いしますといってやってもらった。
お腹の上から軽く、くるりと回してみるといとも簡単に回ったのである。いまにも回転しそうな状態で留まっていたらしい。そこで手を添えてやることによって逆子が治ってしまった。
それを聞いた時に、へ― そういうこともあるんだ。産婆さんが手で回転させるということは聞いたことがあるが現実に出来ることに驚いた。
それにしても良かった。鍼灸師としても、逆子には多少の自信があっただけに実はがっかりしていたのである。
とりあえず、手術は止めにして、自然分娩で出産することに切り替えたという報告であった。
その後、2カ月たって上記の報告である。こんな時が一番うれしい。鍼灸師としての生きがいを感じる。