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うつ病からの生還 1 2010.06.22

うつ病からの生還 1 

 

 42歳、男性、会社員

 

 彼の仕事は設計師で、椅子に腰かけてパソコンを操作するのが仕事であった。立ち上がると痛まないのだが、椅子に座ると、肩が凝り始める。辛抱してそのまま仕事を続けていると、耐え難い激痛となって襲ってくる。

 

 

 仕事は忙しく、夜中の11時頃まで残業が続く。肩の激痛に耐えながら毎日家族のためにがんぱっていた。朝になって、会社に行くことが苦痛になっていた。今日もあの痛みに耐えながら残業をするのかと思うと、たまらなく会社に行くのが嫌になった。

 

 

 ある日、会社に行こうとしたところ、急に心臓がドキドキして不安になってきた。吐き気もして、どうしても会社へ行けない。その日は会社を休んで病院に行った。とうやらうつ病が出てきたようですと医者に言われた。軽い精神安定剤を処方された。

 

 

 その薬を飲んでいると気分がすかっとして会社勤めも何とかこなせた。しかし、その薬もだんだん効かなくなってきた。薬を増やしたり、種類を変えたり、特効薬といわれる精神安定剤に切り替えてもらった。

 

 

 薬を飲み始めて、3年が経過したころからドキドキや不安感が、増大してとうとう会社に行けなくなった。上役と相談して3カ月の特別休暇を貰った。何とかしてまず肩こりを治さなくてはならない。そう考えた彼はインターネットで調べて鍼灸院を訪れたのだ。

 

 

 診察をしてみると、肝臓系統が異常に過敏になっており、心臓系統が弱っているというバランスの崩れがあった。無理に無理を重ねていると、このようなバランスの崩れとなって現れる。

 

 

 何が原因でそのようなバランスの崩れを引き起こしたのか、生活環境を聞いてみた。酒は缶ビール(350ml)毎日3本。運動はまったくしない。脂っこいもの肉類は好きなほうで、過食気味なところがある。宴会や友達と飲みに行った時には、酒をいくら飲んでいるかわからない。ほとんど酔いつぶれる寸前まで飲んでいる。

 

 

 これらを総合して考えられることは、酒の量が肝臓の負担能力をオーバーして日常繰り返し行われていたと考えられる。肩こりの激痛に耐えながら毎日11時までの残業という過労が身体の疲労を増大させた。精神安定剤を3年も飲んでいることによる肝臓系統への負担も大きい。運動不足による身体能力の低下の上に、多くの負担要因がかぶさってきたのが原因と考えられる。

 

 

 以上のことを考え併せ。まず酒を辞めることを勧めた。次に精神安定剤を出来るだけ早くやめるよう勧めた。毎日30分以上の散歩をしてもらうことにした。治療は患者と鍼灸師の23脚で、歩調が合った時、初めて効果が出てくる。このことを患者さんによく理解してもらって鍼灸治療を開始した。

 

 

 この患者さんとても素直で、酒はその日から自主的に辞めた。運動は毎日40分歩いているという。精神安定剤は不安がって辞めてくれない。それでもある程度の協力はしてもらえているので、薬のほうは徐々に減らしてもらうことにする。

 

 

 肩こりのほうは、非常に複雑な経絡のこり方をしていたのだが、何とか8回の治療でほとんど感じなくなるまで回復した。椅子に座っていても、家庭内でのパソコンくらいでは何ともない状態にまでなった。

 

 

 薬のほうは5回目くらいのとき、強く辞めるように勧めた。本人もよしやってみるか、ということで、すべての薬は辞めてしまった。5日間、かなりの副作用が来るかなと思っていたが別にどうということもなかった。これで安心した彼は薬をすっかり飲まなくなった。

 

 

 来月から会社に行きたいと申し出たところ、一度面接に来てくれと上司から連絡があった。久しぶりの会社へ面接に行くとき、不安と心臓がドキドキしはじめた。その日は1日中、不安とドキドキがおさまらず、家に帰ってからもドキドキする。たまらなくなってその日から薬を飲み始めた。

 

 

 3日後、鍼灸院に来て薬を飲み始めたことを報告した。ここが我慢のしどころだから、すぐに薬を辞めなさい。大丈夫、鍼灸治療できっと治してあげるから、といってまた薬を辞めてもらった。それから10日過ぎたが、もうすっかり不安ドキドキは起きていない。

 

 

 あと10日後に会社へ出勤することになっているが、鍼灸治療で出来るだけ完全に近い形で送り出したいものだ。バランスの崩れはまだ残っているが、いつまでも休んでいるより、会社へ行きながら時々鍼灸治療をして慣らしてゆくことが大切だと思う。

 

 

 会社へ出勤しだして4日目に来院した。何とか頑張っているという。ドキドキ不安は多少あるが何とかこなしている。明日から連休で3日間休みがあるので、家族で旅行に行ってくるという。

 

  旅行から帰って3日目に来院した。いきなり、会社には行っていません。この3日間、家で寝ていました。会社に行く気がしないのです。また薬も飲んでいます。嫁も父親も薬を飲めというし、もうどうしたらよいか分からなくなりました。

 

 びっくりしてしまった。順調に会社務めができているものと思っていた。それが全然ダメになっていたとは、想像すらできていなかった。

 

 薬をやめろ辞めろと言い続けてきた自分にも責任がある。中途半端なアドバイスで有能な社会人を廃人に追い込むことになっては申し訳ない。

 

 そこで1つの提案をした。鍼灸治療には毎日通ってきてください。その代わり治療代を3,000円から1,000円にしてあげます。これなら毎日通えるでしょう。

 

 この提案は、鍼灸治療はただの刺激でしかないため、治療効果が2日間くらいしか持たない(うつ病の場合)。そのため治療期間が開くと体調が悪くなり、会社勤めも難しくなる。

 

 そこで毎日治療することによって、会社勤めを順調にすすめることをかんがえたのである。その日から患者さんの了解を得て、毎日治療することにした。日曜、祭日以外は毎日の治療が始まった。

 

 今日で1週間が過ぎたが、毎日順調に会社に通っている。薬も飲んでいない。鍼灸治療をすると、毎日ぐっすりと寝られるといって、本人も喜んでいる。

 

 しかし、朝の出勤時間になると行きたくない思いはいつもと同じである。妻や子供のために、重い体に鞭打って出かける。出かけてしまうとやらなしょうがないという思いから、晩まで頑張って仕事をしている。

 

 本人もうつ病との戦いであるが、鍼灸師である私にとっても、薬をやめさせた責任と治療師としてのプライドにかけて絶対に成功させなくてはならない思いである。

 

 毎日治療に来るようになってから、1カ月が経過した。会社に慣れてきたのと、安定して夜がぐっすり眠れるようになったためか、朝、会社に行くときの不安感と行きたくないという気持ちがなくなってきた。

 

 小さな会社なので、彼を励ます会といって、ボウリング大会を社長以下全員で催してくれた。コンプレックスを感じていた彼は、会社の皆がよくしてくれることに、とても安心した。会社の中でも彼の心が安定してきた。 

 

 会社に行き出してから1カ月半が過ぎた。診察して診ると、うつの反応がなくなっている、正常な脈をしていた。始めて正常な脈になった。 その日は治療をしなかった。3日後に次の診察日があったが、その日も正常な状態であったので治療はしなかった。

 

 明日から盆休みに入るので、次の診察日は1週間後になる。このまま正常な状態が続けば良いのだが?

 

 うつの症状がなくなった脈状になったので治療は1週間に2回とした。家族も彼がよくなっていることを認め始めた。

 

 なぜよくなっていることを家族が認めたのですか?自分がくどくどと文句を言う回数が最近めっきり減ってきたから、ずいぶん良くなったと感じているということだった。

 

 朝、会社へ行くことが普通になってきた。

会社に行くのがいやだなー!という気持ちがなくなった。

 

正常な脈になってから3カ月が過ぎた。最近、うつの症状は全くない。治療に来ても反応があるかないか検査だけして、反応がなければ治療もしないで帰ってもらっている。まったく正常に戻って3カ月、あと1回、2週間後に来て検査して何でもなかったら完治とする。

 

2週間後、脈診でうつの反応は全く出てこなかった。会社の出勤も順調で体調もすこぶる良い。今回の診察で完治と認め、本人も納得して治療を打ち切った。 

  

 

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