臨床例

眠れない 2008.03.22

64歳、女性

 

母親(90歳)が末期がんで苦しんでいた。癌という病気は痛みが激しくて苦しみ続けるという特徴がある。

 

その看病に1ヶ月ばかり付き添いをしていたのだが、看病していても夜中に痛がるので、背中をさすったり、足をもんだり、看護婦さんを呼んだりで、ほとんど寝ることができなかった。

 

そのうちに、身体はぐったり疲れて眠たいのに、目がさえて眠れなくなってきた。2時間くらい寝るとパッと目が覚めてそれから眠れない。1日中ボーっとしながらも看病を続けていた。昼間も少しでも時間があると寝るようにするのだが、どうしても目がさえてぐっすりと眠ることができなくなってしまった。

 

1ヶ月の看病の末、母親は亡くなった。葬式を済ませて、やれやれこれで安心して眠られると思ったのだが、病院での習慣が残っているのか、頭が過敏になっていて、ぐっすりと眠ることができないのだ。

 

そこで考えたすえ、東洋医学で何とかならないものですかといって、当院を訪れたのであった。

 

過敏性不眠症といって、看護疲れや、無理な受験勉強、会社の過激な勤務、などによって眠くて仕方がないのに無理をして起きる習慣をつけると、頭が過敏になってしまい、ほんの少し眠ると目が覚めて次の仕事をする態勢になってしまうのです。

 

このようなことはよくあることで、過労死やうつ病の原因にもなっています。

この女性の頭を触診すると、頭のてっぺん(百会穴)にこりこりとした筋のような感じと、強い圧痛がある。これは脳神経の疲れから、弱っている反応が頭のてっぺんに現れている状態なのです。

 

治療は頭のてっぺんにあるコリと圧痛を目当てに接触鍼をした。鍼によって、過敏反応が取れたことを確認してから、同じところに知熱灸で7壮すえた。治療後、なんだか頭の中が軽くなったようだと言って帰っていった。

 

翌日電話があり、帰ってテレビを見ているといつの間にか寝てしまい、気がついたら4時間も寝ていたと言う。その夜は久しぶりで8時間ぐっすりと眠ることができました。といって喜びの電話をくれた。

 

その後、この女性はすっかりもとのように、よく眠ることのできる生活に戻ることができた。

 

もともと健康な女性であるから、ちょっとした身体の異変を修正してあげれば、このように訳けもなく治ることもあるのです。

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