虚実の判定 2020.02.03
虚、実、の判定
虚、実の判定は鍼灸治療にとって最も基本的な、最初に決める作業です。
鍼灸の治療は、虚実を判別して、虚は補い、実は寫す、と言うのが基本になります。最初に虚実の判定に誤りがあると、治療は逆効果になる事も有ります。
病気になっている患部には、虚、または実、実と虚同時、の3種類の反応があります。虚の患部は弱り、冷え、凹み、色が悪いなどの変化がある場合もありますが、ぜんぜん変化の分からない患部もあります。
その時は違和感を覚える患部を、患者さんに指差してもらい、その患部に提鍼を当て、患部の虚、または実を判定します。4粒の提鍼を当て、脈診して沈脈が強く打ってきたら虚の患部です。
過敏になっている患部は、発赤、痛み、引きつり、腫れ、痒み、などの症状がある場合がありますが、全くそのような変化が無い患部もあります。その時は1粒の提鍼を患部に当て、脈診すると沈脈が強く打ってくると実の患部です。
意外と多いのが実と虚の患部です。実の反応があるのですが、同時に虚の反応もあります。この場合は実を優先して、実の反応として治療点を探します。痛み、違和感、引きつり、硬結、などの変化がある時もありますが、全く患部には変化が無い時もあります。
患部に1粒の提鍼を当て脈診すると沈脈が強く打ってきます。しかし、同時に4粒の提鍼を当てても、脈診すると沈脈が強く打って来るのです。このような時は実の患部として扱います。
治療するときに鍼先で接触鍼をして、実の反応を取り除きます。そこに1粒の提鍼を当て脈診すると沈脈が強く打ってこなくなります。この時点で実の反応は無くなっている事が分かります。
実の反応が無くなった患部を確認してから、患部に4粒の提鍼を当てると、沈脈が強く打ってきます。患部には虚だけが取り残されている証拠です。今度はそこを補う為、知熱灸を虚の反応が取れるまで据えます。
虚の反応が無くなると、4粒の提鍼を当て、脈診しても沈脈は強く打ってこなくなります。これで実と虚の反応がある治療点の治療は終了です。
老人を中心として、虚の反応がある場合が多いので知熱灸で対応します。2番目に多いのが実と虚の反応がある治療点です。実の反応だけの治療点は胃経の治療点に多く見られます。
患部が痛いから実反応、患部が痺れているから虚の症状と決めつけて治療してはいけません。患部が痛くても虚痛、患部が痺れていても実の痺れの場合もあります。あくまでも提鍼を当てて、脈診で虚実の判定をして下さい。
患部が漠然として分からない時、例えば座っていると身体が左に傾くと言う症状の時などは、その症状から虚の症状と仮定して、治療点を探します。このように患部が特定されていない時には、症状から推し量ります。
例えば、テンカンでよく倒れる人の場合、引きつり、急激な失神、酷い痙攣、などの症状から、実の症状と仮定して治療点を探します。
乗り物酔いで、バス、乗用車、船、電車など乗り物に乗ると、吐き気を催すという患者さんの場合は如何するか? まず本治法で証の決定をします。すると、どの経が一番虚で、どの経が一番実か、という事が分かります。
本治法の証を診ると、肝経の陰が一番虚で、肝経の陽が一番の実となっていたとします。その証に従って、肝経陰は補い、肝経陽の太衝穴に実反応がありますから、接触鍼をして実反応を取り除きます。
1、 虚実の判定は、患部に提鍼を当てて、その反応で虚実を決めることが最も多くなります。
2、 漠然とした症状の場合は、訴える症状から判断して虚実を推理する。
3、 推理した場合は時々、提鍼で虚実の判定をして間違わないようにする。
4、 本治法の証を参考にして、その証に従って虚実を決める。
標治法をする場合は、上記の方法で虚実の判定をしっかりと確認して、出来るだけ間違いのない、標治法をして下さい。