誤治(ごち) 2008.06.03
誤治(ごち)
誤って、間違った治療をした場合のことを誤治という。
なんの場合でも、正しい方向と間違った方向があるのですが、鍼灸の場合でも治療を間違うことがあります。
鍼灸の場合、普通は間違った治療をしても少々気分が悪い、くらいの事で2,3日もすると治ってしまうことがほとんどです。
ところが、肝経だけはかなりひどい症状が出ます。
昔から「癇(肝)に障る」と言う言葉がありますが、その癇に触るの癇は本当は肝経の肝からでた医学用語でありました。
肝経が過敏になって、肝実を起こした病で、ぎっくり腰とか、寝違いで首が回らないとき、肝実を誤って肝虚と診断して知熱灸で補ったとします。
ただでさえ肝経が過敏になって、動けないほどの痛みがあるのに、肝経の要穴に元気になる知熱灸をすると、よけい過敏になって寝台の上から降りられないほどの痛みが襲ってきます。
すぐ誤治に気づいて鍼治療をすると良くなりますが、経験の浅い鍼灸師の場合は慌てふためいて救急車を呼んでしまうという失態を演じることもあります。
また肝虚も同じです。肝経が弱って、自発痛がある人に、肝実の痛みと間違って、鍼で肝経に瀉法の鍼をすると、自発痛がひどくなって、夜も寝られないほど痛みが来ることもあります。
しかし、鍼灸の良いところは、ひどい誤治をしても、2,3日そのままにしておくと、だんだん良くなってきて、元の状態のところまでは戻ってくれるのです。
本治法の証決定をする場合、肝経の虚、実だけは出来るだけ間違わないように心がけてください。
間違いが怖いからといって、やらないでいると技術が伸びません。
リスクがあるのは、すべての医療において当たり前のことですから、リスクを乗り越えて頑張ってください。