臨床例

手根管症候群 2008.03.22

41歳、女性、3児の母、実家が印刷屋さんでその手伝いをしている。紙を数える仕事が多く、手を使うことは非常に多い。その上、3児の母であるから炊事、洗濯、掃除、後片付け、など休む暇がない。2週間前から左手首が痛いなあと思いながら仕事をしていた。だんだん痛みがひどくなって、最近では夜中にうずくようになり、中指と薬指の先がしびれてきた。これは大変だと思って、お医者さんに行って注射をしてもらったが何の効果もない。手術をすれば良くなると言われたが、手術は最後の手段として、まず鍼灸で何とかならないものかと、コンピューターで調べてやってきたというしだいである。

 

調べてみると、左手首の中央、中指から手首近辺にかけて圧迫されるような痛みがあり、手首を圧迫すると痛がる。手首で手の甲あたりが赤くなって少し盛り上がっている感じがする。中指先と薬指先はしびれており、急に何かに触ると飛び上がるほど痛いときがある。

 

これは、手首の使い過ぎかまたは何らかの原因によって、中指で手の甲側が過敏になり炎症をともなって、痛みが出ているものである。その反対に中指の手掌側はひどく弱っており、痺れ感が指先に出ていた。

 

中指の手背側と手掌側のバランスが極端に崩れたことが原因でこのような症状となって現れたものである。

 

治療は手背、中指の過敏になって炎症を起こしている経絡に鍼をして炎症をしずめると共に、手掌、中指の弱っている経絡に対して知熱灸で補い、バランスをとることでこのような症状は改善されるのである。

 

治療法は下記[ ]内にまとめて記しておきます。

 

治療が終わって手首の感じをみてもらうと痛みがほとんど消失している。また指先のしびれ感もない。患者はびっくりして「こんなに早く効くこともあるのですか」といって驚いていた。

 

しばらくは、できるだけ左手首を使わないことと、2日に1回治療を受けに来るよう説得して治療を終わった。

 

その後、1日おきに2回治療して完治した。痛みがひどくても、若い生命力のある人の痛みは案外早く治るものです。年を取って慢性になりじくじくした痛みの場合は、そう簡単には治りません。

 

[左手中指甲の過敏になって炎症を起こしている部分に関連のある経絡、右足示指内端、右前腕三焦経の前天井穴(肘の少し手首寄り)腰椎2番、3番の右脊際、この3箇所に接触鍼をした。この接触鍼によって中指甲の炎症は収まった。

 

さらに左手中指手掌側の弱っている部分、これに対しては関連する経絡、右足薬指外側端、右前腕内側の曲沢穴、腹部へその右側盲兪穴とその上下、この3箇所に知熱灸をした。

 

この知熱灸によって左手掌中指の弱りは修復された。]

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