臨床例詳細｜丸亀市・高松市の鍼灸院は普門堂鍼灸院

治せる鍼灸師

　新規開業してから５ヶ月で、連日７名の患者さんを診察している女性がいる。鍼灸で７名というのは１名で１時間かかるから、朝から晩まで満杯の盛況である。

　広島県の山の中で、見渡すと遥かかなたに３，４軒の農家が見えるだけの農村地帯だ。県道のすぐ横に治療院はあるが、時たま車がブアーっと通り過ぎるだけの閑散とした地域だ。

　ここにしゃれた鍼灸院の看板が立っている。中に入るとこじんまりとした個室を、女性らしく淡い色調のカーテン、壁、家具類で統一した清潔な治療室があった。

　待合室は農家の仏間を利用しているため、治療室の３倍ほど広さがある立派な応接室だ。

　こんなところに開業しても、３年間はお客も来ないだろうと予想していたらしい。そこで彼女は地域の人に知ってもらうことから始めようと、地域の行事に積極的に参加した。また、老人施設での鍼灸ボランテア活動を月２回のペースで始めた。

　５月に開業してから３日目のことである。ぎっくり腰で動くのもやっとの男性がやってきた。寝台に寝るのにも時間がかかり、とてもつらそうな男性であった。

　その男性に対して、約１時間丁寧に鍼灸治療をした。治療を終わって立たせて、腰を左右前後に動かす動作をさせてみた。痛くない！！　男性は狐につままれたような顔をして、驚いている。

　満面の笑みを浮かべて、元気に手を振って帰っていった。地域の消防団員に鍼灸院での出来事について熱心に話した。またガソリンスタンドでも、お客さんに話した。

　田舎の良いところは、地域の人はみんな仲間で、親密な繋がりがあるところだ。その利点が見事に功を奏した。

５月に開業して、６月には１日平均３，４人の患者さんが来るようになった。７月のある日、広島の地方新聞の記者がやってきた。

　過疎地の山間部に帰ってきた若者が、事業を始め、がんばっている姿を紹介すると共に、それを応援する記事だという。

　彼女は喜んで快諾した。記事は、彼女が症状を聞き取りしている写真を載せ、その周りに鍼灸治療院での活躍ぶりを紹介した。

　新聞の威力はすごいもので、新聞を読んで、ぜひ治療してほしいという患者さんが、次々飛び込んでくるようになった。

　毎日満杯の盛況になったが、彼女はここが踏ん張りどころだと、手抜きのないように、慎重に、丁寧に治療した。

　彼女の治療手腕を認めた患者さんは口コミで、家族や友人、知人を紹介してくれた。痛いところに鍼をするのではなく、遠くはなれた所に治療点を選んで治療する技術も、患者さんの驚きの的となった。

　彼女は1日7名と限定している。治療が荒くなるのを避けるためと、自分の健康も維持しながら治療を続ける為には、7名が限度であった。当日治療できなかった患者さんは翌日か、翌々日に回ってもらった。

　彼女は鍼灸学校を卒業してから、3年間、普門堂鍼灸院で修行した。刺さない鍼、温める知熱灸、独特の遠隔治療、提鍼を使った診察技術、古典を重視した経絡治療、独創的な経脈、絡脈図、これらを駆使した治療は彼女を、治せる鍼灸師に育て上げることができた。

　普門堂では、3年間の修行で卒業となる。彼女は今年4月に卒業した、初めての卒業生であった。現在4名の研修生が修行を積んでいる。

　確実に治せる鍼灸師になれば、必ず繁盛するし、世のため、人のためにもなる。彼女は、広島の片田舎に、立派な花を咲かせることができた。これからどれだけ発展するか、楽しみな逸材である。