臨床例

打撲傷 2011.04.15

打撲傷


 小学校5年生、男子。


サッカーの選手で5年生であるが、チームではなくてはならぬ、エースストライカーである。そのため、相手チームのマークも厳しく、たびたび負傷する。負傷して動けなくなったら、鍼灸治療におばあちゃんが連れてくる。

 

 いつものことだから、治るのが当たり前に思っている。3日後に大切な試合があるから、それまでにはどうしても治してください。オイオイそんな事を云っても、打撲にも程度があるし、絶対に3日間で治るという保証はできないよ!! でも出来るだけの事はしてあげるから。

 

 治療、患部をみると、右足首が少し腫れている。本人に押さえさせると3カ所ばかり痛いところがある。

 

 ボールを蹴るとき、相手の選手も反対側に向かって思いっきり蹴ろうとした。そのとき足と足が交差して、2人ともひどく、足首に打撲を負った。その時から歩くのにもビッコを引いて歩いている。

 

 打撲、など患部がはっきりしている場合の治療は、その患部に直接治療する。この患部には実と虚が混在している。

 

 実というのは過敏になって腫れ痛んでいるところである。虚というのは弱って保護してもらいたい部分である。その両方が混在しているので普通はなかなか治りにくい。

 

  冷やすと実のところは気持ちよく痛みも和らぐ、ところが虚の部分が冷やされることによってよけい悪くなる。温めてやると虚の部分は気持ちよく治ろうとす る。ところが実のところは、腫れも痛みも増してくる。このように両方の症状を併せ持っているので、案外治りにくいのである。

 

 なぜこのようになるかというと、打撲することによって、患部は負傷する、この時点で、患部は虚(弱る)の状態になっている。その虚を治すために、体は過敏なところを作り出し、痛みを発信する。

 

 これは体を休ませるため、痛みで動かせないようにしている。自然治癒能力が働いているためである。

 

 何日か休ますことによって徐々に治ってくるのであるが、今回はすぐにでも治さなければならない。その点、鍼灸治療は痛みを速やかに軽減させるはたらきがある。

 

 治療は患部の過敏になっているところに接触鍼をして過敏(痛み)を取り除き、その後、弱っている部分に知熱灸をして補なう治療をする。

 

 最初の治療後、歩かせてみると痛みは半減していた。毎日、治療して3回の治療で完治。

 

 試合当日は走っても痛みがなく、試合に出られた。エースストライカーとしての重責を果たし、チームが優勝したとの報告があった。

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