逆気について 2020.03.24
逆気について
人体の気の流れは、「陰は上り、陽は下る」と言う気の流れの循環があります。経絡治療を習っている人達は当然知っている事ですが、この逆気が治療の時に大きく役に立つのです。
そこで逆気に付いて説明しておきます。「陰は上り」という事は、気の流れは足の裏から、下腿、大腿、陰部、腹、胸、喉、顔面、上腕、前腕、手掌と言う風に流れています。人間が立ち上がって両手を万歳した姿勢で、足の裏から手の先まで流れます。
「陽は下る」という事は陰から上って来た気が、手掌側から手背側に移りまして、手背、前腕陽、上腕陽、頭、後頸部、背、腰、臀部、大腿陽、下腿陽、足背、と流れています。足背からは足底に移り、また陰となって上ります。
この流れが陰は上り、陽は下るという気の流れです。これが正常な人の気の流れです。風邪を引くと、気の流れが逆流「逆気」して陽は上り、陰は下る、となります。風邪を引くと、気分が悪くなり、足が冷えて来るのも逆気のせいです。
この気の流れを利用して病気の治療に役立てることが出来ます。まず第1番に風邪ひきを客観的に捉えることが出来るのです。本人は風邪を引いていると気が付いていなくても、治療する側が風邪引きを前もって知ることが出来ます。
急に血圧が上がったり、下痢、頭痛、痛み、食欲増大、食欲減少、などの症状が急に出てきた場合は逆気による症状と診る事があります。私は急に何かの症状が出たという患者さんの場合、逆気をまず疑います。
次に本治法での証決定の時、各ブロックの比較脈診で気の流れに反して、一部のブロックだけが虚となっている現象を掴み、上合水穴を使うか、経金穴を使うか等の判断に使います。
標治法ではウエーブで治療点に飛ぶ場合、そのブロックに虚、実、の反応が出ているので、それを確認しながら治療点に飛ぶ事になります。
例1 目の疲れ 手示指外端が虚 前腕陽、上腕陽、は実なので頭と比較、頭が虚であることを確認して治療点を頭に取る。陽は下りの原則では手背は実のはずだが虚になっている。前腕陽、上腕陽は実であるから治療点には飛ばない、そこで手背と関係の深い頭と比較して頭が虚であれば治療点を頭に取る。
例2 肩凝り 足背の胃経「足示指4-3K」に実の反応がある場合、足背と下腿陽、大腿陽を比較する。大腿陽に実の反応が強い場合は、反対側の背中に飛び、背4-3Kが治療点となる。
正常な気の流れの場合、足背や大腿陽は、陽は下るの原則から上腕に比べて虚となっているのだが、実の反応がある場合は、実となっている。
例3 便秘 手背3-1Kが虚になっている場合。そこから上腕陽に飛び、さらに腰の3-1Kに飛び、治療点は腰3-1Kとなる。
陽は下るの原則から手背が虚になる事は無いのだが便秘になると手背や上腕陽が虚になっており、さらに腰の3-1Kも虚となっている。このルートの反応を診る事によって治療点にたどり着ける。
例4 背中から腰にかけての重ダルサ 手背3-3Lが虚の場合、前腕陽、上腕陽と比較して上腕陽が虚の場合、そこから背中に飛び背3-3Lが治療点となる。
この場合も陽は下るの関係から、手背や上腕陽は下腿陽と比べて実のはずだが、疾患がある場合は虚の反応が出ている。その反応を追いかけると治療点にたどり着ける。
例5 右50肩で前方挙上が痛い
50肩で右上腕陽と右手背5-5Kが実となっている場合、右手背と左手背を比較する。左手背5-5Kが実の場合が多く、そこから左上腕陽5-5Kに飛び、そこが治療点となる。
この場合、陽は下るの原則から手背よりは上腕陽の方が虚であるはずだが、50肩の痛みがあると上腕陽の方に実の反応が強くなる。
上記5例でも分かるように陰は上り、陽は下るの原則から、疾患があると部分的に虚、実、の反応が現れて来る。そして疾患が解消されると元の、陰は上り、陽は下る、の正常な反応を示すようになる。