糠漬けのすごいパワー
明治時代、ドイツの医師ベルツは東京大学で教鞭をとり、29年間も日本で過ごした外人です。このベルツがあるとき日光に観光に出かけました。東京から人力車で14時間かけて日光に行ったのです。
その時、日本の人力車を引いていた車夫の驚異的な体力にビックリ仰天したそうです。たった一人で東京から日光まで14時間もかけて、しかも舗装されていない道を、外国人を乗せて走ったのです。
何を食べてこのようなスタミナが付くのだろうか、不思議に思ったベルツは、お弁当を見せてもらいました。そこには、玄米のおにぎり、梅干し、たくあん、糠漬けされた人参、大根、ごぼう、の千切りだけでした。
ちなみに、江戸時代の飛脚の平均走行距離は1人平均、137kmでした。今のオリンピック選手よりもスタミナがあったかもしれませんね。
このスタミナの原因は何でしょうか?
糠漬けの糠床には栄養が一杯詰まっていたのです。たんぱく質、脂質、繊維質、カルシウム、リン、鉄、ビタミンA、A1、B1、B2、B6、ナイアシン、などあらゆる栄養が豊富に詰まっています。
その中に新鮮な野菜を生のまま漬け込みますからビタミンCなどもたっぷり取れるわけです。あらゆる食材の中でもトップクラスの栄養素を持っていると言えます。タクアンも糠床に付け込みますから同じ効果があります。
さらに、発酵させていますから食物性乳酸菌が豊富に生きています。植物性乳酸菌の特徴は、体内で分泌する消化酵素と仲良くする親和性がある為、体内に入った時、胃酸や胆汁で分解されません。その為、小腸も通過して大腸まで届きます。
大腸の中で善玉菌として大活躍します。食物繊維も豊富なので元からあった善玉菌の餌にもなります。大腸は免疫システムの70%が腸に集中している所ですから、ここの免疫システムが活発になると、いろいろな疾患に効果があります。
胃癌、肝臓がんの予防、胆石を防ぐ、肥満防止、歯や骨を丈夫にする、インスリンの分泌を促す、脳卒中を予防する、大腸がんを予防する。など多彩な効果を発揮します。
腸の中は健康の中枢を担っている所で、善玉菌の質、量、共に増大すると、それに伴って免疫力もパワーアップします。腸の中で、良質な血液、良質な栄養、が吸収され、それが全身に送られ、その恩恵にあずかった体内の、50兆の細胞は、全身で活発な活動を始めます。病気の予防というより、病気にならない身体になるのです。
糠漬けや、沢庵、梅干し、みそ汁、玄米食を、毎日食べていた昔の人はとんでもない力持ちでした。女性が、60kの米俵を5俵担いでいる写真が残っています。昭和14年、力持ち大会での写真です。もちろん背中に乗せてもらったのですが、それでも全部で300㎏の重さです。すごいですね。
私は男ですが、30㎏入りのコメ袋を担ぐのがやっとです。そこには運動不足もありますが、決定的な違いは腸内細菌の量です。農薬、防腐剤、酸化防止剤、あらゆる化学薬品で痛めつけられた、腸の中には最低限の菌しか生き残っていない状態です。
単に運動量の違いだけで、これほどの力の差が出るとは考えられません。筋力の差は、健康度の差であります。頭の機能も、免疫力、聴力、視力、活動力、すべてに置いて、差が出ていると思われます。
糠漬け、沢庵、梅干し、お味噌汁、玄米食、などは忘れ去られようとしている食材ですが、日本人として、伝統的な食材の原点に立ち返ってもう一度、腸内細菌を丁寧に増やしていく作業が、本当の健康を作り出す原点になると思います。
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