遠隔治療(便秘)
鍼灸には患部から遠く離れたところを治療して、患部の疾患を治すという技術がある。これが実によく効くし、一時しのぎではない、本格的な改善となるから面白い。
女性のお腹が張る、痛いなどの症状に、足の内踝の上、5センチほどの処にある三陰交という穴にお灸をすえるとたちまち治る。また耳鳴りには足裏の然谷穴にお灸をすえるとよく効く、などの遠隔治療がある。
最近面白い症例があったので報告する。
35歳女性、大変頑固な便秘で困っています。何とかならないものですか?といって来院した。
日常的に便秘しており、下剤は毎日欠かしたことが無い。普段は3日おきにはどうにか排便できているが、今回は10日近くも排便が無い。下剤も飲んでいるがどうしても出ないので、腹が気持ち悪くてしかたがない。
便秘にも痙攣性便秘、弛緩性便秘、薬剤による便秘、冷えによる便秘、肝臓系統の弱りによる便秘、など色々な種類がある。
今回は肝臓系統の弱りによる便秘についてお話をします。
左の図を見てください。(図はクリックすると大きくなります)臀部の一番下に肛門があります。この臀部と後頸部が上下の関係で関連があるのです。
肝臓系統の弱りで肛門付近の弱りがあって、便を直腸まで誘導する力が弱った為に起きた便秘です。肝臓系統が悪いというのではなくて、単に弱いというだけであって心配することはありません。
この弱りを改善してやれば便秘は解消します。そのために使うのが臀部と関連のある後頸部の治療点です。知熱灸という穴を温めるお灸をします。
さっそく診察してから治療を始めました。ところがこの女性、治療中に先生、申し訳ありませんがトイレに行かせてください。と云うのです。はいどうぞと云って待っていると,ニコニコして帰ってきて、アアすっきりしたといってお腹をなでています。
これには私もびっくりしました。頑固な便秘が治療中に解消するのは、私の永い鍼灸治療の中でも初めてです。普通は帰ってから翌朝に排便があるのがあたりまえですが、この人の場合、よほど溜まっていたのかもしれません。
首の後ろにお灸をして便秘が治るのですね、と云って感心していました。この人はその後10日ばかり快調に便通がありました。今では便秘になったらときどき来院しています。
臨床記録
本治法 肺肝相克 経金穴を使う、右から商丘、経渠、左から中封、復溜に
知熱灸をして補う。
虚性の邪があったので、右の豊隆、偏歴、左の飛陽、光明に接触鍼をする。
標治法 後頸部の頸椎6番とその両側1センチに知熱灸をすえる。
その他、三陰交、然谷、上陰谷、期門、日月、太椎、陶道に知熱灸 をすえた。
※臨時休診日はお知らせをご覧ください。
[施術時間]
丸亀本院: AM8:30~12:00/PM2:00~7:00
高松院: AM9:00~12:00/PM2:00~7:00