治療室で仕事をしていた時の事だった。外がなにやら騒がしい、出て行ってみると、白い犬が後ろ足に大怪我をしてうずくまっていた。
その周りを息子夫婦と子供が取り巻いて心配そうにしている。「親父、お灸でこの犬を治してくれないか?」という。
診ると、後ろ足に10センチほどの切り傷があり、その足がパンパンにはれている。直径7センチくらいの太さになっていて、膿も出ていた。
犬はあまりの痛さに歩くことも出来ない。身体の向きを変えようとして、動かすとキャンキャンと悲鳴を上げる。
この犬は6ヶ月くらい前から野良犬となり、この近辺をウロウロしていた白い犬だ。近所の借家で住んでいた住人が、引越しの際にこの犬を捨てて、行ってしまったのだ。それからは野良犬となって、近所の人に残飯をもらって暮らしていた。
その犬がなぜか、大怪我をしているのを息子夫婦が見つけて連れて来たのだった。私が鍼灸の先生だから、きっと治してくれると思ったのだろう。
しばらくその傷を眺めていたが、もしかしたら治るかもしれないと思った。犬や猫の治療はしたことが無いが、理論的には治るはずである。
お灸というのは皮膚を焼くことによって、白血球を集めると共に増加させるその白血球が傷口の病原菌を殺すと共に、皮膚の再生能力を高める働きを促す。
お灸の治効能力をこの傷口に持ってくれば、治るはずである。犬はまだ若いし生命力もありそうなので、この怪我から脱却することが出来るはずである。
犬が暴れないように、頭と手足を4人がかりで押さえつけて、傷口の端に、米粒大の艾をのせ火をつけた。「きゃん、きゃん」犬はイタイ、イタイと言っているのだろう。お構いなしに傷口の周りに、どんどんお灸をすえた。傷口を2センチ間隔で取り巻くようにすえた。
傷口が治るまで、我が家で飼ってやることにした。お灸を毎日したところ、思ったとおり、傷口がどんどん良くなってきた、化膿していた部分も正常になり、腫れが引いてきた。
犬の生命力は素晴らしいものがある。人間ではこれほど簡単には治らないだろう。1週間もするともうほとんど治ってしまった。
若夫婦と相談して、「もとの野良犬に離してやろうか」と言ったら、「せっかくうちで治したのだから、飼ってあげようよ」と息子夫婦が言うものだから、この白い犬は我が家の飼い犬になった。
名前は何にする、1才の孫に聞いてみた。「ワン」と一言いった。それで決まり、我が家の白い犬の名前は「ワン」と決まった。
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