刺絡は経絡を活発にする
指端刺絡は太い鍼にて、大きめの傷を作り、血を出すことによって、経絡の気血を動かし、活発にする作用がある。
太い鍼を刺すことから当初、寫法になるのではないかと考えていた。当然、実の経絡を寫法する目的で鍼を刺し、その経を弱める作用があると思っていた。
当院の刺絡は、鍼先を穴に当て、30回ぐらいさするだけの鍼をします。血液は出しません。
早いし、簡単で、痛くなく、効果も普通の刺絡ぐらい効果があります。
ある冬の日、身体の弱い患者さんが、霜やけが足に出来て痛くてたまらない、治してください。と言うので、霜焼けの所に知熱灸を据えた。
ところが一向に治らない。その時、患者さんが、去年の冬に霜焼けが出来た時には、先生は鍼をして治してくれたのに、今年は鍼をしないのですか?と尋ねられた。
その時はっと、思い出した事があった。昔、手足の末端、全部に酷い霜焼けが出来て、毎年冬になると、死ぬかと思うぐらい酷い目に合います。そのように訴える患者さんを治療した事があった。
その時、全部の指に刺絡をして、完全に治した事があった。それから次の冬になっても、霜焼けは出来なかった。
この経験から霜焼けには鍼がよいと思っていたのだが、それをすっかり忘れていたのだ。
又、こんな経験もした事がある。脳卒中の患者さんで右の手と足が屈曲して伸ばせない。リハビリをしていたのだが、さっぱり効果があがらない。
一体この経絡はどうなっているのだろう、経絡の虚実を探ってみると、曲がっている経は、実の反応が出ていた。
そこで実の反応を現している経の末端に、指端刺絡を行った。治療に行くたびに、実の反応が出ていた。3ケ月くらい続けて(週2回)行った。
3カ月目に実の反応が取れると同時に、手足の屈曲は完全にとれて、まっすぐに伸ばせるようになった。
手足の末端は脳に関係しているから、脳細胞に影響を与え、改善する事が出来たのだろうと考えた。
今、考えてみると、この素晴らしい経験を、もっと深く考えてさらに新しい分野にも応用するべきであったと思われる。しかし、この時はこれっきりで深く考えもせず、忘れ去られていた。
さて、今回の霜焼けの件であるが、弱い患者さんの足に出来た霜焼けに、指端刺絡をして全快させる事が出来た。
不思議に思うのは、刺絡は寫法である。寫法がなぜ霜焼けに効果があるのか?
霜焼けは血液の流通が悪くなる為の産物である。刺絡することにより経絡を活性化させ、血流が活発になると想像できる.その為、霜焼けが改善されるのであろう。
とすれば、刺絡は寫法でありながら、邪魔なものを取り除き、その経絡の気血を活発に運行させる手技と考えるべきであるかもしれない。
脳卒中の患者さんにしても、指端刺絡をすることによって、脳内の邪魔な物が取り除かれ、経絡の気血が活発に運行出来るようになり、手足の屈曲が取り除かれたものと思われる。
刺絡が経絡の血流を良くする、として使える事になれば、活用範囲はぐんと広がる。指端と脳の関係を考えれば、指端刺絡により脳内の活性化を目指して臨床応用を進めて行きたい。
脳卒中、痴呆症、うつ病、壊疽、など多くの疾患に応用できる可能性がある。そのノウハウをしっかりと築きたいものだ。
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